鬼ヶ坂 (祖父川)|武儀町のむかし話
祖父川の奥には、八つの滝がある。滝の水は青々として年中豊かにあふれている。
この滝の神さま「清滝明神」を村の人たちは大切におまもりしている。
ある年のこと、くる日もくる日も日照りが続き、村はすっかり水不足となった。あれほど豊かにあふれておった八滝の水も、川底の石がゴロゴロころがるばかりである。
村人は清滝明神にお供え物をして祈った。
「どうぞ、雨をたのむぞな」
「粟やひえもとれん。菜っぱもとれん、雨をたのむぞな、どうぞ雨をたのむぞな」
だが、雨は降る様子もなかった。
ところで祖父川からとなり村の水成への道は、くねくねと続く急な峠であった。
ある日、峠の道をかけ下りてきた村人の一人がさけんだ。
「粟野のはすぶちには、どえらいこと水があふれとるぞ」
「こんこんとわき出とるんや」
これを聞いた村人たちは、こおどりして喜んだ。
「そうやけど、あのおそがい峠が越えられるかよ」
「峠の道でおそろしい鬼の声が毎夜のように聞こえるそうな」
村人は、あれこれとうわさし、思案した。
それから間もないある夜、金棒を持った鬼を先頭に赤鬼青鬼らが、もくもくと峠の道を登って行った。鬼の面をかぶった村人たちの水取りの行列である。
天秤棒で桶をかついだ鬼や幼い子どもの鬼までもおったそうな。
水をかついで峠越えは難儀なことやったが、祖父川の村人の力を合わせた水運びをじゃまする者は誰もおらなんだ。
こうして、日照りが続くと、村人たちは、鬼の面をかぶって行列を作り峠を越え、はすぶちの祠の前で雨乞いのおどりを踊り水を運んだ。
村人たちは、村を救ってくれたお礼に、水無様の祭には、鬼の面をかぶり「棒振り」として長い行列を警護する。
今年の祭にも「棒振り」を先頭に水無神社からはすぶちの祠までの「お練り」は笛や太鼓の音と共に春の祭を盛り上げた。